【新製品インプレッション】Mytek Digital Brooklyn DAC/PREAMPを徹底的に解剖する ~ ハードウェア編

STAFF :  S弐号

ミッドレンジの価格帯に当たる製品を眺めるにあたって非常に興味深いのは、そのメーカーの考え方であったり個性が垣間見えるところだと思うのです。この傾向は、ハイレンジセグメントの製品を見るより顕著に表れるように思います。

 

今回眺めてみるのは、昨年秋に発表されたMytek Digitalの新しいミドルレンジモデル「Brooklyn DAC/PREAMP」。フラッグシップManhattan DAC/PREAMPのジュニアモデルであり、Stereo192-DSD DACの後継機に当たります。よく指摘されるのですが、Mytek Digitalについては製品の内部仕様について積極的に公開しない傾向が強いのです。これまでの製品のデバイス仕様についても公式には殆ど発表されておらず、今回のBrooklyn DAC/PREAMPについても同様です。

 

そこで今回はBrooklyn DAC/PREAMPの仕様を分析しつつ、従来機であるStereo192-DSD DACやフラッグシップ Manhattan DAC/PREAMPとの共通点や差異を確認していきたいと思います。その中からMytek Digitalの持つ志向も感じとって頂けますと幸いです。

 

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まず、Brooklyn DAC/PREAMPの特長を三つの視点からまとめてみましょう。

 

【Manhattan DAC/PREAMP のジュニアモデル】

・対応フォーマット・サンプルレートはManhattan DACに準拠しつつ、価格帯はミドルレンジセグメントで展開される。
⇒ Windows ASIO/Nativeにおいて、DSD256/PCM32bit384kHzに対応
⇒ MacOSX CoreAudio/DoPではDSD128/PCM32bit384kHzまでの対応

 

【Manhattan DAC/PREAMP と同一の設計思想】
・サウンドを比較対象軸とした場合の圧倒的なコストパフォーマンス
・コンシューマ機と言えども、プロオーディオでの利用が可能な仕様
⇒ SDIF/AESEBU/ADAT/WordClockIN・Outの搭載
⇒ バランス出力の搭載と+4dBuでのアナログ出力対応
・ファームウェアアップデートがユーザーサイドで可能
⇒ 機能追加やバグフィックスが随時可能となり、製品の長寿命化に寄与
⇒ BrooklynよりUSB経由で実行可能(旧製品はFireWire経由)
・高精度なFemto Clockの採用
⇒ Manhattanでの開発実績をスライドして採用
・ESS Sabreのフィルター設定用パラメータをユーザーに解放
・DAC+プリアンプ+ヘッドフォンアンプとして機能出来るよう設計
⇒ DAC単体に加え、プリアンプ単体での高いサウンドクオリティ
⇒ 二系統のアンバランスヘッドフォン端子(出力500mA/6W)
⇒ 専用リワイヤーケーブル(別売)を利用しXLR仕様ヘッドフォンのBTL駆動が可能
・三つ仕様のボリュームをユーザーの好みで選択可能
⇒ アナログ or デジタル or バイパス

 

【Mytek Digital的には第二世代の設計】
・周辺機器との接続の親和性向上を狙い、業界標準のUSB AUDIO CLASS2.0に初対応
・DACチップの変更
・機能追加
・電源部の変更とDC INPUTの搭載
・操作性の向上
・コストダウンと共通プラットフォーム化の推進

 

ここで特に解説すべきは、三番目の第二世代設計という視点となりましょう。従来モデルとの相違点と言えるここに焦点を当てながら、なぜBrooklyn DAC/PREAMPがMytek Digitalにおける第二世代設計と言えるのか順に見ていきましょう。

 

▽周辺機器との接続の親和性向上を狙い、業界標準のUSB AUDIO CLASS2.0に初対応

 

過去のMytek Digital製品は、自社の求める性能や機能の実現を容易にする目的で独自仕様のドライバを採用し、これを持ってUSBやFireWireを経由したPC/DAC間のパケットストリーミングを行っていました。この仕様の影響により、オーディオ用NASと呼称される様な周辺機器とは“USBを経由した直接接続が出来ない”という制限が存在しました。つまり、自社製ドライバをUSBDACの対向に存在する機器へインストール出来ない場合では、上流側からのDACの制御が不能であったというわけです。また、MacOSXで利用する場合にも専用ドライバのインストールが必要になっていたこと、これも有名な話です。

 

ここで今回のBrooklyn DAC/PREAMPです。これは、今や業界標準となったUSB Audio Class2.0に準拠する形となりました。結果、周辺機器との接続親和性が大幅に向上する事となり、ユーザー側に組み合わせの選択肢を増やすという利益をもたらしています。実はMytek Digital社、Manhattan DAC/PREAMPをリリース後、「次期モデルはUSB Audio Class2.0に準拠させる」とコメントしておりまして、今回それが実現するに至りました。Mytek Digital社のこの判断については、日本のマーケットからの要望も大きく影響を与えていたのだそう。日本のマーケットでは、Buffalo DELAなどのオーディオ向NASがハイエンドオーディオマニアからいち早く好意的に受け入れられていた事に由来します。ちなみに、オリオスペックにてBrooklyn DAC/PREAMPとBuffalo DELAのUSB直接接続機能を検証したところ、正常に認識・動作している事を確認しました。

 

またMacOSXについてもOSネイティブのドライバで動作する事からドライバインストールの手間が省け、またMac実機側とUSBドライバにおける相性問題についても原則考慮する必要が無くなったと言えます。なお、USB Audio class2.0ドライバをネイティブで搭載していないwindows OSについては、これまで同様にドライバのインストールが必須です。

 

USB Audio Class2.0への準拠に伴い、ハードウェア側の仕様も変更されました。Brooklyn DAC以前のDACのUSBレシーバー周辺部については、その時代におけるハイスペックな外部ソリューションを採用していました。対してBrooklyn DAC/PREAMPでは、“USBハブコントローラ+ARM”で構成する自社設計のものとしています。第一世代のMytek Digitalの設計を“優秀なソリューションを集結するインテグレーションに長けた技術志向”とすれば、第二世代のそれは“自社設計において全体を構築する技術志向”に変化したもの、と解せるでしょう。

 

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▽DACチップの変更

 

従来 ESS SabreのES9016系の8ch仕様“ES9016S”をステレオモードで利用する事によりスペックアップを図る形でD/A変換部を構成してきたMytek Digitalですが、Brooklyn DAC/PREAMPでは初めてES9018系のDACチップにスイッチしました。“ES9018K2M”という9018系の2ch仕様のチップです。これにManhattan DAC/PREAMPに搭載された高精度なFemto Clockを組み合わせており、両デバイスについては極めて至近距離に配置されています。

 

USB経由でのDSDネイティブ再生やDSD256再生の実現を業界内最速で実現したMytek Digitalをして、日々変わりゆくサンプルレート・フォーマットへの対応競争には積極的に関与する傾向がみられるわけです。が、“採用するDACチップのグレード競争”という観点において、このメーカーはかなりクールな立場に立っていたように思います。Mytek Digital曰く、「キーデバイスとしての重要性は認めてはいるが、DACチップだけで機器の音質は決まらない」との認識を有しており、サンプルレート・フォーマット対応競争への対応とは立場を異にしていたわけです。この点を具体的にしますと、“電源部やアナログ出力段での設計も含めてオーディオは総合的に考えねばならない”という意味合いです。またDACチップそのものに関しては、“セカンドグレードのDACチップでも、使い方や周辺部の設計で上位チップと同等のサウンドクオリティを引き出せるケースがある”と強く主張していた経緯があります。実際のところ、フラッグシップのManhattan DAC/PREAMPではその“総合力”に重きを置いた指向を具体化していました。今回のBrooklyn DAC/PREAMPについても、9018系とはいえ最高グレードを採用していない点から見て、これは「あえての選択」と思わざるを得ないのです。

 

踏まえ、Mytek Digitalはやみくもに高額なキーデバイスに頼る事をせず、“音質”と“コスト”のバランスを思慮深く、周到に検討しているように見受けられます。ちなみに、旧モデル時代からMytek Digital製品の市場での競合は、サウンドクオリティの観点で製品価格の2~3倍のモデルにまで及ぶことがあるのです。この点においては、Stereo192-DSD DACやManhattan DAC/PREAMPの様な従来機の設計思想の延長線上に存在するものと思います。

 

s-Brooklyn2nd_DAC_clock

 

▽機能追加

 

Brooklyn DAC/PREAMPでは、対応するフォーマットの強化とプリアンプ機能の強化が行われました。まず対応フォーマットの強化として挙げられるのは、MQAフォーマットに対するデコード機能の追加です。(※欄を参照のこと) ハードウェアデバイスとしてはXMOSの新型SoCとなるXE200シリーズを採用しており、これをMQAデコード用DSPとして使用しています。MQAの詳細解説は本論と外れますので割愛しますが、ざっと申し上げますと、英国メリディアン社が開発したPCMハイレゾ向圧縮コーデックです。2Lが行う様なflac形式化したダウンロードファイルだけでなく、TIDALをはじめとしたストリーミング配信サービスでも利用が予定されている最新のフォーマットとなります。日本でeONKYOが配信サービスを始めた事をみましても、MQAコーデックを利用したハイレゾ系サービスは今後採用の拡大が見込まれるわけです。Mytek DigitalはこのMQAフォーマットに対して世界でも最も早く賛同したベンダーの一社となります。この点は、Mytek Digitalがサンプルレート・フォーマットへの対応競争に対して積極的に関与している事実を如実に表しています。

 

※2016/4/12リリースのファームウェア ver.2.05 より、MQAデコード機能を実装。旧ファームウェアをご利用中の場合はアップデート可能です。

 

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プリアンプ機能の強化として指摘出来る点は、MM/MCの両方に対応したアナログフォノイコライザーの標準搭載です。標準というところ、このモデルがプリアンプも志向している現れのように感じます。デジタル機器でありながらもADCは利用しておらず、フォノイコ部分は純粋なアナログ処理のものとなっています。試聴した際のサウンドクオリティも大変良い印象を持ちました。なお、Broolyn DAC/PREAMPのアナログサウンドはデジタル側のサウンドともまた味わいが異なっておるのが特長でして、入力毎の音造りについては大変興味深いところです。詳しくは別記事にて明らかにしたいと思います。

 

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▽電源部の変更とDC INPUTの搭載

 

従来機では、良質且つ強力なリニア電源を搭載していた点がオーディオマニアサイドから高い評価を受けていたのですが、Brooklyn DAC/PREAMPではスイッチング電源に変更されました。実のところその理由について詳細は語られておりません。リニア電源と比較した場合の音質上のディグレードを懸念する一部の海外ユーザーの声に対し、Mytek Digitalは「スイッチング電源の採用に際して心配は御無用。その音質については特に配慮しているので」と全くあっさりした回答をしてます。実際の試聴サウンドを見ましても、電源仕様についてのディメリットなど特段意識する事はない、品位の中にエネルギー感が溢れる基調でありました。

 

なおBrooklyn DAC/PREAMPで特筆すべき点は、DC INPUT端子が実装されたことです。Mytek Digitalにおける考えとして、この端子は外部バッテリー駆動を想定してるものだそう。但し、現在は外部バッテリーユニットのリリースについての詳細コメントはありません。

 

DC INPUTですので、Brooklyn DAC/PREAMPに適合した外部のリニア電源ユニットがあれば動くと考えました。オリオスペックではちょうど適合するフィデリックス製のリニア電源ユニットを販売しております事から、これをテスト利用してみたのです。結果、このDC INPUTを利用したサウンドチューンは可能との解釈をしています。サウンド基調についての比較も別記事を予定していますので、そちらをご覧下さい。ちなみに、Mytek Digital社はアウターでの強化電源について現状想定していないようでして、斯くて、代理店側でも外部電源の利用についての公式なサポートはありません。ご留意ください。また、サードパーティ製外部電源や自作電源を利用した場合の故障についても同様の判断がなされます。オリオスペックにおいても、弊社で正常動作を確認した外部電源のみをサポート致します。

 

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▽操作性の向上

 

ディスプレーの表示文字数が少ない従来機で本体操作を行おうとしますと、階層構造になった機能操作チャートを理解した上で求めたい機能を呼び出す必要がありました。搭載機能の全体像が画面上から一目で把握出来なかったため、どうしても慣れが必要だったのです。多機能機であるものの階層構造は合理的に出来ていましたので、その理解について決して難しいわけでは無かったのですが、初見においては確かにハードルの高さを感じられたユーザー様もいらっしゃったように思います。対してBrooklyn DAC/PREAMPはディスプレー表示を大幅に改良していまして、実装しているすべての機能を簡単に視認出来るようになりました。この改良は大変好ましい方向に作用しており、ユーザーの操作性向上へと大きく寄与しています。

 

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また今回は、PC/Mac向にインストール出来るコントロールパネルも用意されています。このコントロールパネルは実装しているすべての機能の全体像を見渡しながらマウスで個別操作できるのに加え、本体ファームウェアのアップローダーを兼ねています。コントロールパネルでの操作は、机の上に操作用PCを置きつつ、オーディオラックの中の様に少し離れた場所に設置したDACを操作する場合において大変重宝します。もちろんAppleリモートも使えますが、再生ソフトを操作するマウスを離すこともなくDACの機能を弄る事が出来ますので、想像以上に便利になりました。

 

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▽コストダウンと共通プラットフォーム化の推進

 

Manhattan DAC/PREAMPのジュニアモデルにして定価を1/2以下に設定しているわけですので、ほぼ同一スペックと言えど相応のコストダウンがあって当然でありましょう。以下、順にこの点を指摘していきます。

 

1.利用用途が限定されると思われる一部の物理入力端子をいくつかの機能で切替利用出来るようにしています。従って、物理端子数が兄弟機より減少していますが、利用可能な機能についてはほとんど同様に確保されるよう工夫されています。
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例1:SPDIF(COAX) ⇔ SDIF
・SPDIF(COAX/RCA)2系統をSDIFのL/Rchに切替
例2:LINE IN ⇔ PHONO(MM) ⇔ PHONO(MC)
・LINE INをPHONO(MM)かPHONO(MC)に切替
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2.従来機に搭載していたFireWire端子の採用を見送っており、機能のシンプル化と回路の簡略化を図っています。結果、本体ファームウェアのアップデートは、従来機と異なりUSBを経由して行うことになりました。

 

3.Manhattan DAC/PREAMPの様な、共振周波数の分散を目的とする“アウターパネルと内部筐体の異種金属による分割構造”を止めて、構造的に簡略化しています。これはStereo192-DSD DACと同様のイメージです。

 

4.冠に頂くBrooklynとはシリーズ名を意味しており、今回ご紹介しているDAコンバーター以外にも今後ADコンバーターのリリースを予定しています。ちなみにADコンバーターのプロトタイプは日本を含めて既に公開済です。このBrooklyn DACとBrooklyn ADCは、共通筐体、共通のハードウェアプラットフォームにて構成されており、DACとADCの同時開発によってスケールメリットを狙っているように想像されます。

 

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